自分の呼吸を感じる5分 - 不安から離れて心を安らかにする時間
なんだか心が落ち着かない、漠然とした不安がある、そんな風に感じられることはありませんか。日々の暮らしの中で、私たちはつい先のことを心配したり、過去のことを思い出したりして、心がざわざわしてしまうことがあります。
そのような時、どこか遠くへ旅に出たり、特別な何かを始めたりしなくても、ご自身の力で心を穏やかにする方法があります。それは、いつも私たちと一緒にある「呼吸」に、たった5分間だけ意識を向けてみることです。
この「自分の呼吸を感じる」時間は、マインドフルネス呼吸法の一つです。難しそうに聞こえるかもしれませんが、ご安心ください。誰でも、いつでも、たった5分でできる、とてもやさしい方法です。
自分の呼吸を感じることの意味
私たちの呼吸は、私たちが意識しているかどうかにかかわらず、いつも続いています。そして、その呼吸は「今、この瞬間」にしか存在しません。
不安や心配は、たいてい過去のことか未来のことに関わっています。「あの時、こうすればよかった」「この先、どうなってしまうのだろう」。心が過去や未来に飛んでいき、今ここから離れてしまう時に、私たちは不安を感じやすくなります。
呼吸に意識を向けることは、そんな過去や未来へのさまよいから、そっと心を「今、ここ」に連れ戻すことにつながります。たった5分でも、ご自身の呼吸だけに注意を向ける時間を持つことは、外の世界のざわつきから少し離れ、ご自身の心に寄り添う、大切な時間となるのです。これは、ご自身を労り、大切にするためのやさしい習慣と言えるでしょう。
自分の呼吸を感じる5分呼吸法の具体的な手順
さあ、実際に5分間、ご自身の呼吸を感じてみましょう。特別に何かを用意する必要はありません。今座っている椅子の上や、畳の上、ベッドの上など、ご自身が楽に座れる場所で試してみてください。
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楽な姿勢をとります。 椅子に座っている場合は、足の裏を床につけ、背筋を軽く伸ばします。手は腿の上などに置きましょう。座布団やクッションの上に座る場合は、あぐらでも正座でも、ご自身が心地よいと感じる姿勢で構いません。肩の力は抜き、リラックスします。
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目を閉じるか、視線を一点に定めます。 もし抵抗がなければ、そっと目を閉じます。目を閉じることに慣れていない場合は、目の前の床など一点をぼんやりと見るだけでも構いません。
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ご自身の「呼吸」に意識を向け始めます。 深く呼吸をしようとしたり、呼吸のペースを変えようとしたりする必要はありません。ただ、今ご自身が行っている「呼吸」に注意を向けます。
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呼吸の「感覚」を感じてみます。 鼻を通る空気の出入り、息を吸う時にお腹や胸が膨らむ感じ、息を吐く時にお腹や胸がしぼむ感じなど、呼吸に伴う体の感覚に優しく注意を向けます。特定の感覚にこだわる必要はありません。今、最も強く感じられる呼吸の感覚に意識を置いてみましょう。
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心に浮かんできた考えには、優しく気づき、呼吸に意識を戻します。 途中で、今日の夕食のことや、明日の予定、過去の出来事など、様々な考えが心に浮かんでくることがあるかもしれません。それは自然なことです。そのような考えが浮かんできても、「いけない」と思う必要はありません。ただ、「あ、何か考え事をしていたな」と気づいて、再びご自身の呼吸の感覚に、そっと意識を戻します。これを繰り返します。
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そのまま5分間続けます。 タイマーなどをセットして、5分間、ただ呼吸の感覚に意識を向け続けます。タイマーの音が鳴ったら、ゆっくりと体を動かし、目を開けて、元の状態に戻ります。
期待できる効果と実践のコツ
この5分間の呼吸法を終えた後、すぐに劇的な変化を感じないかもしれません。それでも、たった5分でも呼吸に意識を向けたことで、心が少し落ち着いたり、頭の中が少し静かになったりするのを感じることがあるでしょう。
大切なのは、「上手くできているかな」と心配したり、心を無にしようとしたりすることではありません。ただ、今ご自身が行っている呼吸に、優しく意識を向けてみる、その時間を持つこと自体に意味があります。心がさまよいやすいのは、人間の自然な性質です。考え事が浮かんできても、自分を責めずに、何度でも優しく呼吸に戻ってくれば大丈夫です。
毎日同じ時間に行うと習慣になりやすいですが、心がざわついた時や、少し疲れたなと感じた時に、その都度5分間試してみるのも良いでしょう。続けるうちに、不安を感じた時に「あ、呼吸に意識を向けてみよう」と自然に思えるようになるかもしれません。
まとめ
日々の忙しさや、先の見えないことへの心配などで、心が疲れてしまうことは誰にでもあります。そんな時、大がかりな準備は何もいりません。ご自身の体と、たった5分間の時間があれば、いつでも心を穏やかにする時間を持つことができます。
自分の呼吸を感じることは、今、この瞬間を生きている自分自身に優しく寄り添う行為です。たった5分間のこのやさしい習慣が、あなたの心に安らぎをもたらし、不安を少しでも軽くするためのお手伝いになれば幸いです。ぜひ、一度試してみてください。